要望書の最初に掲げたのは、「自然を五感で感じ、家族みんながのびのびと成長できる冒険の舞台」という言葉だった。
鳥や虫の声を聴く。庭で実を摘む。花や木や雨の匂いを嗅ぎ、土や木に触れ、太陽の光を浴びながら遊ぶ。子どもたちに、自然の美しさだけでなく、その力強さや厳しさも知ってほしい。そんな願いが、要望書の冒頭に書かれている。
家全体を、庭も含めた「冒険の舞台」にしたい。子どもたちが走り回ったり、飛び降りたり、隠れたりしながら、発見や成長の喜びを感じられる場所にしたい。要望書には、家の形より先に、そこで過ごしてほしい時間が書かれていた。
完成まで変わらなかったこと
要望書は、2024年11月の初稿から、家づくりの打ち合わせに合わせて何度も追記されている。自然とつながる庭や、外と内のつながり、光と影の移ろい、落ち着ける寝室。細かな希望は整理され、形も変わっていった。
その中で、完成まで変わらなかったのは、子どもたちが自然と触れ合えることだった。
自然の中で過ごす時間を、特別なお出かけの日だけのものにしない。家の中から外の気配を感じ、木や土や季節の変化に触れられること。それが、家づくりを通じて大切にし続けた希望だった。
要望は、部屋の名前だけではなかった
要望書には、雨の日に慌てない玄関、雨に濡れない自転車置き場、キャンプ道具や農具をしまう場所、濡れずに出られる縁側、室内から触れられるほど身近な自然などが書かれていた。
光と影の移ろいや、木の触り心地、鳥のさえずり、雨の音、木や雨の匂い。庭や窓、軒、玄関といった希望も、自然を五感で感じるという願いにつながっていた。寝室は、朝まで暗さを保つ落ち着いた場所にしたいと記されている。
こうして見ると、一つひとつの希望は、設備の指定というより、そこでどう過ごしたいかを考えたものだったのだと思う。
書き出した希望と、できあがった家
要望書に書いたことが、そのまま全部実現するわけではない。打ち合わせの中で、優先順位を考えたり、別の形を選んだりする。要望書の二枚目には、検討を重ねるたびに追記が加わっていた。
それでも、最初に何を大切にしていたかを残しておくと、完成した家を見たときに、選択のつながりを振り返ることができる。
私たちの場合、最後まで変わらなかった願いは、子どもたちが自然と触れ合えることだった。
要望書の最後には、子どもたちにとって「ここが実家だ」という安心感が育ち、いつか「帰りたい場所」として心に残る家であってほしい、と書かれている。
自然に触れられること。そして、家族が帰ってこられる場所であること。家づくりが進む間も、その願いは変わらなかった。
この話の前後
- てまびよりについて:P00「てまびより、はじめます。急がず暮らすための場所」
- オーナーズメッセージの背景:P01「オーナーズメッセージに書いた『庭が欲しい』の、その先」
- 家ができてから:P02「家は完成したけれど、暮らしはこれから」

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